卒園式

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その安全基地にはなんでもあった。
訓練場も司令室も、地下シェルターも。どんな危険な場所に出かけても、そこに戻れば必ず守られる。
僕は何度もその基地に戻り、エネルギーを補給しては外の世界へ飛び出していった。

ある日、僕は気づいた。基地にいる時間がだんだんと短くなっていることに。
外の世界が、未知で、刺激的で、新鮮で、眩しくて、楽しくて仕方がない。
信頼できる仲間と語り合ったり、新しい敵に挑戦したりしているうちに、いつの間にか僕は基地の場所がわからなくなってしまった。
地図を探してもどこにもない。仲間に聞いても首を傾げるばかり。誰ひとり、基地の場所をはっきりとは思い出せない。
心細くなった僕は、そっと目を閉じた。すると、あの基地の光景が鮮やかに頭の中に浮かび、ほっと心を温めてくれた。
目を開けると、そこには眩しい外の世界が広がっている。きっと大丈夫だ。
心で唱え、僕は一歩踏み出してみる。
青春
公開:25/03/17 18:00

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