幻想交響曲第9番『水平世界より』~恋路
6
4
水平線は悩んでいた。
千日ばかり前、岬の発射台から飛び立つ銀の船に、水平線は恋をした。
真白い雲を靡かせ、瞬く間に去った美しい姿を忘れかね、今日戻るか明日帰るかと期待して、水平の円弧も千々に波打つほどだった。
あれは人間の造った船で、星の海の竜宮へ行くのだと、朝の挨拶がてら太陽が教えてくれた。
千の夜が明ける頃、お使いを終えて戻るはずと、月も満ち欠けの合間に、宙を見上げ続ける水平線を慰めてくれた。
次に会えたら、ああ言おうこう告げようと考え考え、千の日と千の夜を越えた頃、待ち焦がれた船影が大気圏に尾を引いた。
お帰りなさい。万感込めた声が届いたか、赤々と燃える船は水平線の懐へ一直線に飛び込み、抱きしめる様に畳んだ円弧の海に銀の星屑を振りまいたのだった。
後日、人間が海面衝突した惑星探査機の破片を回収したが、心臓部に封入された小惑星リュウグウの試料カプセルだけが見付からなかったという。
千日ばかり前、岬の発射台から飛び立つ銀の船に、水平線は恋をした。
真白い雲を靡かせ、瞬く間に去った美しい姿を忘れかね、今日戻るか明日帰るかと期待して、水平の円弧も千々に波打つほどだった。
あれは人間の造った船で、星の海の竜宮へ行くのだと、朝の挨拶がてら太陽が教えてくれた。
千の夜が明ける頃、お使いを終えて戻るはずと、月も満ち欠けの合間に、宙を見上げ続ける水平線を慰めてくれた。
次に会えたら、ああ言おうこう告げようと考え考え、千の日と千の夜を越えた頃、待ち焦がれた船影が大気圏に尾を引いた。
お帰りなさい。万感込めた声が届いたか、赤々と燃える船は水平線の懐へ一直線に飛び込み、抱きしめる様に畳んだ円弧の海に銀の星屑を振りまいたのだった。
後日、人間が海面衝突した惑星探査機の破片を回収したが、心臓部に封入された小惑星リュウグウの試料カプセルだけが見付からなかったという。
恋愛
公開:25/03/17 13:50
ラジオ『月の音色』
月の文学館
テーマ:視線の先に
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます