涙面電車（るいめんでんしゃ）

彼が私に背を向け、去っていく。
夢を叶える為に努力する日々or恋人との惰性な毎日。彼が選んだのは前者だった。
覚悟を決めた彼を止める権利なんて私にない。
涙が溢れる。だけど、泣き言は一つも零してやるものかと彼の背を見つめ続ける。
すると私の涙の中に電車が現れた。
電車は私の瞳の前で止まると瞳の奥から現れた彼を乗せ、走り出した。
１分にも満たない出来事。見間違いか？と思うそれを目にした私の瞳からはもう涙は溢れなかった。
きっと、瞳の奥から現れた彼が失恋の悲しみを手に私の中から去ってしまったからだろう。
涙を拭う。これでは彼に置いてかれっぱなしだ。
私も夢に向かって歩き出そう。そしたらいつか、彼とまた再会できるかもしれない。
その時、私はきっと感動でまた涙してしまうだろう。
その涙の中、さっきの電車がまたやってくるようなら、電車から喜びを携えた彼が降りてくるかもしれない。
私はそれを待ちたい。