睡眠中の黒板

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某デジタル化モデル小学校では紙を使わない。生徒はタブレットを見て、先生は大型ディスプレイで教える。
ある日、大型ディスプレイが映らなくなった。修理に三日を要すると業者は言う。教務主任の先生は代わりにプロジェクターを出したが、投射すれば砂嵐ばかりで使い物にならない。そこでホワイトボードを持ち出したが、マーカーのインキが揮発してしまって書けない。マーカーの取り寄せには一週間かかる。困った主任先生は昔の黒板を思い出した。埃をかぶった黒板が倉庫の奥から引出された。チョークもあった。「若い時はこれでよく教えたものだ」だが教室で先生が書こうとするとチョークが滑って書けない。何も書けない。黒板に近づくと音がする。耳をつけてみるとすうすうと静かなイビキ。長期間倉庫に置かれてすっかり眠っているのだ。「起きてくれ。授業ができない」先生はコツコツと黒板を突く。コツコツコンコンと黒板を叩く音が廊下の端まで響いた。
その他
公開:25/03/19 10:27

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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