余所見、許さず!

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(体育いいなー)

ーーパチっ!

校庭でサッカーをする隣のクラスを窓際の席から眺めていると、視界の左斜め前に将棋の駒の桂馬が指された。

(ちっ、ここもか…!)

ノートから下敷きを抜き出し、パタパタと顔を扇ぐ。冷静になれ、まだあるはずだっ…!教室中を俺の視線が走る!

…大好きなサヤちゃんの前には金だろ、机の中には歩、水槽のオタマジャクシの横には銀で…天井のシミの傍には飛車……額に汗が滲む。……ここで、どうだっ!

俺の視線の先には黒板にうっすら残る休み時間の落書きの跡。これならギリ、授業を聞いてるように見えるからばれないはずっ……

「王手っ!」

先生のよく通る声が教室に響き、俺の視界に角が指された。

「参りました…」

うな垂れる俺に先生は言った。

「授業中、余所見しちゃダメでしょ?」

敗北を認め、その後の授業は香車の如くまっすぐに黒板を見つめた。
でも…次こそ、絶対勝つ!
その他
公開:25/03/18 18:30
更新:25/12/14 10:58
月の音色 視線の先に

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

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