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「空が好きかぃ?」
絵筆の先に集中したまま、師匠がお客へ話しかける。
「え、わかるんですか?」
思わず師匠に顔を向けたお客へ「動いちゃだめだよ」と師匠が笑う。お客は「すみません!」と謝り、慌てて視線を遠くへのばした。さっきよりもピンと張った視線の上に、師匠は再び絵筆をのせる。
「視線見りゃわかる。綺麗な夏空色だ」
褒められて、お客の眼差しが柔らかくなる。
うちの師匠は人の視線に絵付けをして、美しいリボンを作る職人だ。弟子の私には、絵付けの段階でお客から伸びる視線の色や手触りはわからない。でも、師匠には見えているのだ。
「好きなもので、視線の色は変わるんですか?」
視線はそのままにお客が尋ねる。
「好きなものっつーか、視線ってのは自分の視線の先に何を求めているかで決まるからよ……ほら、完成だ」
師匠がグッと宙を掴むと、夏空を泳ぐ海月の描かれた美しいリボンがしゅるりと現れた。
絵筆の先に集中したまま、師匠がお客へ話しかける。
「え、わかるんですか?」
思わず師匠に顔を向けたお客へ「動いちゃだめだよ」と師匠が笑う。お客は「すみません!」と謝り、慌てて視線を遠くへのばした。さっきよりもピンと張った視線の上に、師匠は再び絵筆をのせる。
「視線見りゃわかる。綺麗な夏空色だ」
褒められて、お客の眼差しが柔らかくなる。
うちの師匠は人の視線に絵付けをして、美しいリボンを作る職人だ。弟子の私には、絵付けの段階でお客から伸びる視線の色や手触りはわからない。でも、師匠には見えているのだ。
「好きなもので、視線の色は変わるんですか?」
視線はそのままにお客が尋ねる。
「好きなものっつーか、視線ってのは自分の視線の先に何を求めているかで決まるからよ……ほら、完成だ」
師匠がグッと宙を掴むと、夏空を泳ぐ海月の描かれた美しいリボンがしゅるりと現れた。
その他
公開:25/03/18 18:29
更新:25/03/26 18:06
更新:25/03/26 18:06
作品を開いてくださりありがとうございました~。
もし気が向いたら、また遊びに来てください♪
しばらく投稿はお休みします。
2025.3.25
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