視線をひく

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(視線を感じる…。)

仰向けのままベッドで目を見開き真っ暗な部屋を凝視すると、カーテンの隙間から漏れる月光をはじいて銀色に輝く無数の視線が、天井から私へ向けられていた。

(…今夜も?)

ここに引っ越してきてからほぼ毎日。明日も早いんだけどなぁ…と思いながらも重い瞼を擦り体を起こすと、暗闇から自分へ真っ直ぐに垂れる無数の視線を弦に見立てて、ハープのように弾き始めた。
初めてこの視線に気づいた時は、悲鳴を忘れるくらいに驚いた。しかし、なんとなく怖いものではないような気がして美しい視線の一本をそっと指ではじいてみると、星が歌うような綺麗な音色がしたから子守唄を弾いたのだ。
…それから毎夜、私の演奏を視線は暗闇からじっと見つめてせがむようになった。

演奏中、視線の数はトロン、トロンと減っていく。そして、最後の二本がプツンと消えた時、眠りについた視線の先の観客たちへご挨拶するのだ。おやすみ。
その他
公開:25/03/18 18:29
更新:25/10/18 06:25

ネモフィラの旅人( あちこち )

旅人なのでいたりいなかったりします
気分屋です

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