嘘をしまえる缶詰

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 青年は初当選の政治家。その夜、派閥の先輩に呼び出される。場所はとある別荘。駐車場に一人の男がロープでぐるぐる巻にされていた。
「新人、こいつを始末しろ」
 殺せという意味だ。政治家とは非情な世界なのだ。
 記者は冷や汗を垂らし懇願する。
「こ、この嘘を封じ込めておける缶詰をやるから命だけは助けてくれ!」
 記者はどこかへ連れていかれた。明日の朝には遺体が発見されるだろう。
 青年は政治家になったことを後悔し始めた。嘘をつけない性質なのだ。ふと、記者が残した缶詰が目につく。
(嘘を封じ込める……本当か?)
 数年後、青年は次期総理の呼び声高くなった。
 缶詰に自分の嘘を詰め込んだおかげだった。今では自分自身すっかり清廉潔白と思い込んでいる。おかげで有権者にウケが良い。だが、順風満帆に思えたその時、不意に収賄疑惑が持ち上がる。
 会見する青年の後ろで、秘書が缶詰の蓋を開けようとしている。
その他
公開:25/03/18 16:58
更新:25/03/18 16:59

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