知っているけど知らない知人

「よっ！最近どう？こっちに全然顔出してくれないからさ、気になって会いに来ちゃった」
出会い頭、馴れ馴れしくしてくるこの人に、私はどう反応すべきか困っていた。
どこかで会った事はある…かなり親しかった筈…でもこの人の事を何も覚えていない。名前すら分からない。
だから無礼を承知で「すみません。どこかでお会いしましたっけ？」と聞いてみた。
「ちょっと前まで夢の中で毎日会っていたじゃん！」
予想の斜め上を行く相手の答えに私は逃げ出した。
…その印象が強かったからだろう。夢にその人が出てきた。
思い出した。私は半年前、毎日この人に会っていた。何で忘れていたんだろう？
「この人も会いたがっていたよ」
そこには私と同じ顔をした人がいた。
思い出した。私はこの人に代わって、現実を生きるようになったんだ。
私と同じ顔をした人が夢から抜け出そうとする。そうはいくか。
この体を取り戻される前に私は目を覚ました。