透明な目隠し

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気がつくと、暗闇の中にいた。
夢の中のような曖昧な世界で、
私はただぽつんと1人。
景色は何も見えない。
なぜなら私には目隠しがされているから。

とりあえず足を踏み出してみた。
右、左、右、左、と1歩1歩、確実に。
それからその動作を100ほど繰り返してみたが、何かにぶつかることはなかった。
この世界には、何も存在しないみたいだ。

私は何も見えない。
だからこの世界がどんな色なのかも
わからない。
だけどきっと、何も無い世界だから、
色だってないのだろう。

それからも歩き続け、さすがに疲れて、
座り込んでしまった時、ふと、誰かの声が聞こえた。
「目隠しを外してご覧」
そんなことが出来るならとうにやっている
結果は無駄だったのだ。変わらない。
そしてまた、あの声が聞こえる。

「どうして目を瞑っているんだい?」
目を瞑っている?ああ、そうか。

私は、私が、目を瞑っていたんだな。
その他
公開:25/03/08 10:54

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