全員集合保険

九十歳の日に保険屋がやってきた「新しい保険です。生涯出会った人全員に会えますよ」「いつ？」「最期のときに。安らかな気持ちで」
酔狂にも全員集合保険に入った。
それから数ヶ月、保険のことなど忘れて病室にいる。意識が遠のく瞬間、大広間にいた。高級ホテルの立食パーティ。ぎっしりと千人はいるか。和服の妻が横に。十年前に亡くなった妻だ。子や孫、父母や親戚もにこやかに。足を進めるとカラオケ、ゴルフの仲間たち、会社の上司、部下。皆、かつての年齢。クラブのママ、ホステスも。あ、不倫した彼女もすましている。人をかき分けると若いテニスの友人や学友。婚約破棄した恋人は何もなかった顔で笑う。それから中学高校の先生と同級生。私をいじめた奴も親しげだ。小学校の先生や幼い友たち。
司会の声「それでは・・さんの門出を祝して万歳三唱！」
ばんさーいの声。ぱあっと明るい光に包まれ天国かと思うと、さっと幕を切ったように闇に・・