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わたしが居を構える寺の敷地には野原がある。特に手入れはしていないのだが、あたたかくなると一面にホトケノザが咲き、それは見事な紫色のじゅうたんになるのだ。もうすぐ彼岸なので、墓掃除に来る檀家もいて、ようやく春を実感できる季節になってきた。わたしはさっそく筆を取り、あちこちへ便りを書いた。
「『みなさまへ。満月の晩に集まり、日頃の疲れを癒やしましょう。弥勒より』――このくらいシンプルにせねばな」
前置きが長すぎて読む気が失せると地蔵に指摘されたところなので、今回は一目瞭然で伝わるよう気をつかった。手紙は春風に乗り、遥か遠くまで飛んでいった。
「夜になったら危険なところがないか確かめておくとしよう」
人間が寝静まった頃、わたしは野原へ行き、ホトケノザに腰をおろした。広く周りを見回しながら、この世が長きに渡り平穏であるよう願った。
「『みなさまへ。満月の晩に集まり、日頃の疲れを癒やしましょう。弥勒より』――このくらいシンプルにせねばな」
前置きが長すぎて読む気が失せると地蔵に指摘されたところなので、今回は一目瞭然で伝わるよう気をつかった。手紙は春風に乗り、遥か遠くまで飛んでいった。
「夜になったら危険なところがないか確かめておくとしよう」
人間が寝静まった頃、わたしは野原へ行き、ホトケノザに腰をおろした。広く周りを見回しながら、この世が長きに渡り平穏であるよう願った。
ファンタジー
公開:25/03/10 19:28
☆やコメントありがとうございます✨
作品のイラストはibisPaintを使っています。
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