不可逆的ノスタルジア

2
3

 元には戻らないこと。不可逆。
「可逆ではない」だから、これでいいのに「不」も「逆」も否定のニュアンスがあって、グルグルしていると感じる。真ん中の「可」も「回」に形が似ていて、目がまわってくる。

「一方向にしか進まない反応を不可逆反応と言います」
 そういって淡々と板書を進める教師の授業が下手とか、私が化学苦手とか、混乱の原因は色々と思い浮かぶけれど、どれも違う。

 幼馴染のアイツが告白なんてしてくるからだ。

 高校生にもなって時々一緒に登下校する位だから、少し癪だけど自分も相手に気があるのだろう。
 彼の勇気に対する感嘆と、好きと言われた嬉しさと、それより大きな困惑で、私の心は燃焼していた。

 無邪気な子ども時代、夕方のチャイムが鳴るまで公園を駆け回っていた。そんな関係のまま、普通に仲の良い友達という道もあったはずだ。でも、言葉にしてしまったら――。

 私たちはもう、戻れない。
青春
公開:25/03/06 21:25

いぬさか

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容