祖母の針治療

私の祖母は針のお医者さんをしている。
「おやおや…ずいぶん愛されているみたいだね。まだまだ働きたいって言っているよ」
針を見て、針と会話する。針を見れば、使っている人が見えてくるという。
「小さく錆びているね。ここが凝りの原因だよ」
人のように針を治療する祖母。
祖母から針を受け取った人は、預ける前と全然違うと驚く。愛用の針が喜んでいるのが分かるらしい。
「針はね、大切に扱えば人を傷つけはしないんだよ」
本当かなぁ…指に刺さったりしたら痛いじゃん。
「針治療の針は身体に刺さっても痛くないだろ？あれは針と人の信頼関係あってこその仕事だからね」
言われてみればそうだ。
「それに針を大切にしていれば、言葉の針で人の心を傷つける事もなくなるよ」
言葉の針ね…確かにそうだ。
「早く勉強しなさい」
母に言われると心がチクチクするそれも、祖母に言われると心の奥底のスイッチが針で押され、やる気が出てくる。