新島移住顛末

相模湾に島が現れたのは五年前。東京ドーム30個分の広さで海底隆起。地質学者、地震学者、海洋学者が集まったが原因は不明。調査隊が島に入り地震は無関係との結論。新島と名付けられた。島は平地で整備され宅地にされた。湾の中で海流は穏やか。横浜、東京へ高速船定期便が始まり、３万戸各百坪の宅地分譲が行われた。
私と妻は新島移住を決めた。倍率300倍の抽選を勝ち抜き分譲地を購入。広い庭に洋風の家を建てた。
新島は円形で中央に役場兼地震観測所が設置。同心円状に区画され、私の家は海に近い。新居に引っ越すと周囲も若い家族で仲良くなれそうだ。
新島生活を始めて数ヶ月、微震が続いた。地震観測所は津波の心配はないと言うが水位が少し上がったと報告された。島は着実に沈んだ。やがて居住者は島からの退避を余儀なくされた。
数ヶ月後、島は完全に沈没した。気象庁は発表「島は気まぐれに海上に顔を出し、気まぐれに海底に戻りました」