ゴリッパーコーヒー

ウチの社長は珈琲が趣味で、良い豆が入るとそれを私達に振る舞ってくれる。
ミルで砕き、ドリッパーで入れる本格的な珈琲だ。
「君はスッキリとした後味のものが好きだったね」「君は苦味の強いものが好きだったね」「君はカフェオレ派だったね」
社員の好みを知っていて、私達の好みの豆を挽いてくれる。
社長は豆だけでなく、ドリッパーにも拘る。
時々、ゴリッパーというフィルターを使い、珈琲を淹れてくれる。
「今日も仕事に精が出て立派だ！」
ゴリッパーで淹れた珈琲は、中に社長の激励が入る。
「毎日遅刻せずに来て立派だ！」「ちゃんと掃除が出来ていて立派だ！」
当たり前の事も褒めてくれるので、つい嬉しくなってしまう。
社長は珈琲を淹れるのも、社員にやる気を注入するのも上手だ。
社長の凄いところはそれだけではない。
「君は遅刻はするし仕事中に居眠りもする。立派なご身分だな」
淹れ方一つで、珈琲の中に嫌味も残せる。