堅物の恋愛

「私は今日、貴方に助けられたグラスです」
俺の家にやってきたお堅いイメージの女性が突然そんな事を言ってきた。
「棚から落ちた私を貴方がキャッチしてくれなければ、私は割れてしまっていたでしょう」
確かに今日、雑貨屋で棚から落ちたガラスのグラスを空中でキャッチした。
まさか、あのグラスが恩返しに来たとでも？
「その通りです。私は今日から貴方のものです」
嘘を言っている様子はない。元がガラスのグラスだからか、その内心は見え見えである。
だが、その言い方は気に食わない。自分を”もの”だなんて、その言い方は自分だけでなく相手も貶める。
女性は俺を怒らせたと思ったのだろう。頭を下げ、去ろうとする。その腕を俺は掴んだ。
透明度の高い彼女が傷ついているのが分かる。俺がつけてしまった傷だ。
だから責任を取りたい。俺は少しずつ彼女の事を知ろうと思う。彼女に俺の愛を注ごう。
彼女を見ると早くも幸せで満ちていた。