すごい気配り

私は子どもの頃、父の命令でマッチを売り歩いていた。
だけど誰も買ってくれない…当然だ。コンビニで百円ライターが買える時代。わざわざ私からマッチを買う人なんていない。
時折、スマホのカメラを向けられた。マッチ売りの少女だとバカにされた。
はぁ…今日も外は凄く冷える。暖を取る為、いけない事とは思いつつも、私は売り物のマッチにシュッと火を点けた。
するとどうだ。火の中に父が逮捕される姿が浮かび上がったではないか。
それを消し、もう一度マッチに火を点ける。さっきと同じものが浮かび上がった。
そのどちらもがSNSの記事風に浮かび上がるものだから、これは炎上する未来の姿を映し出すものだと理解した。
実際その後、父は逮捕された。私を撮影した人達からの通報があったそうだ。SNSも捨てたものじゃない。
大人になった私はビジネスアドバイザーになった。マッチ一本擦り、目の前のビジネスが炎上しないか占っている。