彫像の怪

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文化都市を標榜するF市は充実したコンサートホールや美術館などで有名である。整備された道路や公園のモニュメントとして沢山の彫刻が設置されている。市内の要所は裸婦像で占められ、抽象的な現代彫刻は少ない。F市が文化施策を始めたのは戦後すぐで、当時の彫刻は裸婦像が主流であったことによる。
今年に入ってF市の彫像に異変が見られた。
ブロンズ製の彫像が変色しはじめたのである。金属とは似ても似つかない肌色を呈する。徐々に変色し何体かはもうすっかり人の皮膚の色になっている。質感も柔らかな肉体を思わせる。市当局が打ち手もわからず様子を見るうちに市内の裸婦像はすべてあからさまに細部までリアルな裸婦そのものとなる。目をそらす通行人もいるが、多くは好奇に満ちて写真を撮ったり、SNSをみて市外からも多数の人がやってくる。対策検討中の市にニュースが入った。筋肉隆々とした青年男性の像も生の人体に変貌してきたという。
その他
公開:25/02/27 07:25

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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