差出人を招く年賀状
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「おい、年賀状!」
「またですか。年賀状なんて最近出しも受け取りもしないのに」
「どうも気になる」
「 貰った年賀状を見返した途端、差出の方がお見えになるなんて偶然、そうそう続かないわよ」
「二度あることは三度ある」
「田中さんが見えたのは法事のついででしよ」
「うん、だけどなぁ」
夫が手にした葉書を見てギョッとする。十年前に死んだ息子からのものだったのだ。
夫の後ろ、締め切ったすりガラスの引き戸の向こうから何かを引き摺る音が聞こえてくる。
そういえば……息子が言ったのだ。
「母さん、くるまの軸がおかしいのかな。引くとキシキシ言うんだよね」
私はこう答えたんだっけ。
「買い換えるのは勿体無いわよ。そのまんま使いなさい。なんでわざわざ年末に行くのかしらね」
「向こうから年賀状出すよ」と、笑った息子はそのまま旅行先で事故に遭い……。
聞き覚えのある車輪の軋みが、一際高く聞こえてきた。
「またですか。年賀状なんて最近出しも受け取りもしないのに」
「どうも気になる」
「 貰った年賀状を見返した途端、差出の方がお見えになるなんて偶然、そうそう続かないわよ」
「二度あることは三度ある」
「田中さんが見えたのは法事のついででしよ」
「うん、だけどなぁ」
夫が手にした葉書を見てギョッとする。十年前に死んだ息子からのものだったのだ。
夫の後ろ、締め切ったすりガラスの引き戸の向こうから何かを引き摺る音が聞こえてくる。
そういえば……息子が言ったのだ。
「母さん、くるまの軸がおかしいのかな。引くとキシキシ言うんだよね」
私はこう答えたんだっけ。
「買い換えるのは勿体無いわよ。そのまんま使いなさい。なんでわざわざ年末に行くのかしらね」
「向こうから年賀状出すよ」と、笑った息子はそのまま旅行先で事故に遭い……。
聞き覚えのある車輪の軋みが、一際高く聞こえてきた。
ホラー
公開:25/02/26 12:14
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