幸せの湯気

朝、卵を割ったら失敗して、細かい殻が沢山入った。
仕事でミスして怒られた。
買いたかったケーキ、私の手前で売り切れた。
彼氏にフラれた。

今日は厄日だ。あまりにも厄日だ。もう私は立ち直れないかもしれない。

沈む気分のまま帰宅する。心做しか、家の中もどんより曇っている気がする。
今日はもうお風呂入るのも億劫だ。こういう日はさっさと寝てしまうに限る。
そう思いながら身体を引きずると、軽快な音楽が鳴った。すると、さっきとは打って変わって身体が軽くなる。そのまま足は台所へ。
音楽を鳴らしたもののボタンを押すと、パカッと蓋が開いてぶわりと暖かい湯気が顔に触れた。一面に広がる輝く白色が、沈んでいた私の心に沁みる。

(私は単純だ。でも、単純なくらいでいいや)

炊きたてご飯をお茶碗に盛りながら、今日あった嫌なことは全部どこかへ追いやった。