根を下ろそう

8
6

青春時代旅を思い出し気まま切符を買った。北行きの始発列車に乗り込んだ。温泉が在る所で降りようか、どんな地に出会うだろうか。まだ薄暗かったが或る駅で降りた。周りは広々とし歩いているともう明るくなっていた。一面田畑で人がいたのでお早う御座いますと言うと、散歩ですかと問うた。私はいいえ、目的の無い旅ですと返すと、彼は笑いながら耕してみますかと畑へ招き入れてくれた。採れた野菜は出荷するからと、二人で集積所に運んで行くと大勢の老若男女が洗ったり纏めたり、生き生きと楽しそうに働いている。
その中の一人に若い頃の自分がいた。驚いた私に、種子を撒く時期にも是非来て下さいと誘ってくれた。
約束の日に始発列車に乗り再び畑に行くと既に皆は作業をしていた、若い頃の自分は居なかった。皆も最初は一人ぼっちでここへ来て、この地が好きになりここで暮らす様になったと。私は決心がついた。春になったら私もこの地に根を下ろそう!
ファンタジー
公開:25/02/20 10:51

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容