かげろう鏡

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趣味は骨董品。先日、出張のついでに地元の古道具屋を尋ねると古ぼけた鏡を見た。銅の装飾額で60cm×40cmほどの楕円形。鏡面にはカバーがあり「鏡」と墨書。店主に値を聞くと20万円、うむ、高い。鏡面を見たいと頼むとカバーは買った人にしか外せないという。店を出たものの気になり、夕方に再度店に。鏡を買って東京に戻った。
書斎に鏡を掛けてカバーを外す。鈍い灰色の鏡面、顔を近づけても何も映らない。騙されたと思ったが、自分の目利きがその程度だと諦め、鏡を大型ゴミに出した。
数日後、客があった。古道具屋から連絡先を聞いてやってきた。初老の紳士で骨董好き。「鏡を譲って欲しい」と。捨てたと言うと「ああ残念。あれは、かげろう鏡といって初めは映らないですが、毎日ビロードで鏡面を磨くとぼんやりと映り、そのうち鏡面に見慣れぬ顔が現れます。それこそ磨いた人の真の顔。その顔を見ながら過ごすと長生きできる鏡でしたのに…」
その他
公開:25/02/20 08:30

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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