バレンタイン

今年も、バレンタインの収穫はゼロだった。
成績優秀で運動神経抜群、クラスの人気者のアイツは、両手から溢れるほどのチョコを貰っていた。
人気者は良いよな、と友人に愚痴ると、友人はへへ、と笑った。

「実はな、俺もチョコ貰ったんだ」

何だと？それは聞き捨てならない。僕は友人から根掘り葉掘り話を聞く。

「小さい頃から毎年貰ってて」

「最初は買ったやつだったけど、ここ最近は手作りで凝ったやつでさ」

「味も俺好みで美味いんだよね」

根掘り葉掘り聞けば聞くほど、惚気を引き出す。バレンタインは過ぎたというのに、甘い空気に胸焼けがした。

「…まあ、僕はホワイトデーのお返しとか考えなくていいし…」
「そうそう！ホワイトデー、今年は何にしようかな。手作りお菓子にハマってるし、器具とかレシピ本あげたら、うちの母さん喜ぶかも！！」