名画でショート046『Elle』(ギュスターヴ＝アドルフ・モッサ)

彼女の持つ二面性に、誰もが虜にされていく。
彼女は天使でもあり、悪魔でもある。少女でもあり、大人でもある。彼女は娘のようでもあり、恋人のようでもあり、母親のようでもある。
彼女の澄んだ瞳の奥には、闇が漂っている。ドクロをあしらった王冠で飾られた彼女の髪型は、淑女のようでもあり、コウモリのようでもある。
善と悪が入り乱れている。全ての二面性を抱えている女性。それがエルだ。
エルはその天使のようなほほえみで、人間を呼び寄せる。集まってきた人間はエルによって踏み潰され、両手でこねくり回され、肉の山となる。
エルは人類を浄化するため、欲望にみまれた人間と肉隗に変えていくために地上に遣わされた神をも超える存在。
彼女はひたすら汚れた人間を潰しつつける。
清らかな人間など、欲望のない人間など、存在しないことを知らないまま。