すごい気配り

「キミは悪霊に憑りつかれている。私が祓ってしんぜよう」
散歩中、怪しげな霊媒師に声をかけられたかと思うと、いきなり除霊が始まった。
「…これで悪霊はいなくなった。除霊料は１０万円だ」
金銭を要求された。いやこれ、どう考えても詐欺だろう！
「払えないと申すか？」
霊媒師の後ろから、黒いスーツを着た怖そうな人達が現れた。
慌ててさっき下ろしてきたばかりのバイト代を取り出す。
「うむ。良い心がけじゃ」
１２万円の入った封筒をそのまま取られた。

肩を落とし帰宅すると、幽霊が僕の顔を見てため息をついた。
きっとさっきの一部始終を見ていたのだろう。
『この前はマルチ商法。その前はぼったくりバー。お前どれだけ詐欺に遭ったら気がすむの？』
面目ない…
幽霊は再度大きなため息をつくと、さっき取られたバイト代の入った封筒を僕に渡してきた。
『今回だけだからな！』
生前凄腕の泥棒だった幽霊に今日も助けられた。