すごい気配り

吾輩は聖剣である。人々から『勇者の剣』と呼ばれている。
岩に突き刺さった吾輩を引き抜くと勇者になれる…と、言う体でやっている。
正直な話、誰だって吾輩を岩から引き抜く事は出来る。別に勇者の血筋や勇気や覚悟も必要ない。
だが、そう簡単に引き抜かせないのは、ひとえに吾輩の気配りである。
先日、５歳の女の子が吾輩を引き抜こうとした。
大学受験を控えた高校生が吾輩を引き抜こうとした。
妻子持ちのサラリーマンが吾輩を引き抜こうとした。
野球の監督が吾輩を引き抜こうとした。
…ちょっと待って。もし引き抜けたとして、魔王討伐行く気ある？
魔王討伐って、もっと暇な人がやるべきだと思うんだ。大学進学や妻子を捨ててまでやる事ではない。
だから私は引き抜かれない。引き抜かれてやるものか！
そんな気配りに吾輩に挑戦する人もかなり減った…
今では月に数度マッサージを受ける為、指圧師に引き抜いてもらっている程度だ。