名画でショート071『月を眺める二人の男』(カスパル・ダーヴィト・フリードリヒ)

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彼らは愛し合っていた。
時代は19世紀前半。男性同士の恋愛が悪徳と思われていた時代。二人の関係は秘密で、だから逢引きができるのは森の中だけだった。
あるときは狩猟のため、あるときは領地の視察のため、様々な理由をつけて、ふたりは密かに山の中で愛を重ね続けた。
ある夕方、二人は夜空を眺めていた。そこには月と金星が、まるで恋人同士にように、並んで浮かんでいる。
ひとりの男は、もうひとりの男の肩に腕を乗せた。そして、二人でささやきあう。
まるで二人を象徴しているかのよう。
月は三日月から新月へと向かう。いまは隠れても、いつか満月になる。
金星は月から離れても、いつかまた一緒になる。
二人はいまを確かめるように、服の下から手を握り合った。
その他
公開:25/08/07 21:58

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