認知症のロボット

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一家に一台、ロボットの時代がやってきた。家事に洗濯、子守りまでなんでもしてくれる。
そんな中、ある家のロボットの調子が悪くなった。
玄関を出るのに5分もかかり、食事は食べたかと何度も訊ね、名前を呼んでも、数秒の空白の後に振り向くようになった。
耐用年数もまだ先だし、故障だろうかと不審がった家長の男はコールセンターに電話をした。
「うちのロボット、調子が悪いんだ」
「使い始めて何年になりますか?」
「三、四年になるかな……」
「症状を聞くに、人間で言うところの認知症です。稼働には問題無いと考えられますので、関節に油を指し、完全に停止するまで気軽に家族の一員としてご利用ください」
それで電話は切られた。
ロボットがやがて動かなくなった時、人々は本物の家族を失ったように悲しみ、愛情を込め埋葬した。
そして後日、また同じ家族を迎えに店へ向かうのだった。
SF
公開:25/08/07 14:07

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