言葉の重み

８月６日。今年もこの日がやってきた。
戦争体験者として毎年講演会に参加していた私も寄る年波には勝てず、もう引退を考えている…
私の体験談はAIにすべて語り聞かせた。今後はAI音声技術とやらが私の仕事を引き継いでくれることだろう。
やっと肩の荷が下りた…もう語ることはない…そう思っていたのに、AIが私に質問してきた。
『もし、戦争が起こらなかったら、何をしたかったですか？』
もし、戦争が起こらなかったらか…
私は絵を描く事が好きだった。画家になっていたかもしれないな。もしくは奉公に出ていたかもしれない。
『これからは、その話をしてみてはどうでしょう？』
戦争が起こらなかったら…の話をか。ふむ…それもいいかもしれない。
戦争の悲惨さを伝えるのも大切だが、戦争が起こらなかったら手に入っていたかもしれない日々を伝えるのも大切な役目だろう。
教える側が教えられる側になるとはな…
長生きはするものだ。