善悪

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 そのスーパーマーケットの精肉売り場では、いつも善人の肉が売れ残っていた。隣のケースに並べられている悪人の肉は、いつも売り切れるというのに、善人の肉は値引きシールが何枚貼り重ねられても、売れ残っていた。理由は単純で、善人の肉は不味いからだ。ある日、そのスーパーマーケットで、事件が起きた。精肉担当者の指示で、善人の肉を、悪人の肉と偽装表示して売ったのだ。この目論見は、肉を食った客からのクレームで、すぐにバレた。そして、この担当者は、逮捕された。こうしてこの担当者は悪人になった。だから、いずれその肉は誰かに食べられることになるだろう。
ホラー
公開:25/08/06 17:38

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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