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映画館に座っていた。観客は俺一人。他には誰もいない。館内が暗くなり後頭部のあたりで音がする。準備中の映写室。スクリーンが明るくなった。影が動く。雑踏。駅。音はない。人々が急がしく歩き回る。コラージュみたいに脈絡がない映像。満員電車、車窓の風景。家族の姿。かたかたとフィルムリールが回る音。旧式の映写機だろう。高層ビル、会社の上司、部下が映る。会議室。退屈そうな顔顔。今日は会議があった。夜の居酒屋。無声のうちに喧騒。昼間の公園。カメラが散歩視線で小径を行くとベンチに座る女性。清楚なSだ。Sが笑う。夜のバーカウンターで隣にS。Sとお堀端を歩く。Sの悲しい顔のアップ、一転して怒り、駆けてゆく後ろ姿が消える。Sと別れ話をしたのだ、今夜。不倫相手のSと。
この映画は何だ!と思うまもなく映像はぷつりと切れて館内は真っ暗。俺は立ち上がって暗がりを出口に向かう。ドアを開けると眩しい外光にくらくらと転倒した。
この映画は何だ!と思うまもなく映像はぷつりと切れて館内は真っ暗。俺は立ち上がって暗がりを出口に向かう。ドアを開けると眩しい外光にくらくらと転倒した。
その他
公開:25/07/31 06:45
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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