推しぬいと私

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「ただいま」
毎晩、推しのぬいぐるみに話しかけるのが、私の日課だ。

ここのところ残業続きで、この子も可哀想。
明日も休日出勤だし。
そうだ、オフィスに連れて行こうか。

会社に着くと、私しかいない。
さっそく、ぬいぐるみを取り出した。

「こんにちは!」
どこかで聞き覚えのある声だ。

この部屋、誰もいないよね?
まさか、ぬいぐるみが……。

「淋しかったよ」
やっぱりこの子だ。

私と「彼」はすっかり意気投合して、話が弾んだ。
盛り上がりすぎて、仕事の手が止まる。

その時、ドアがカチャッと開いた。

「何をやってる!」
部長の声だ。

「何か話し声が聞こえたぞ」
「き、気のせいです!」

推しのぬいぐるみは、何事もなかったように机の上に座っている。

あれ以来「彼」は一言もしゃべってくれない。

私は、いつものようにテレビを見ている。
また、話しかけてくれるのを待ってるよ。
ファンタジー
公開:25/07/30 21:43
更新:25/07/30 22:10
休日出勤のぬいぐるみ ショートショート講座

ろっさ( 大阪府 )

"Plain words, honest hearts."ことばもこころも飾らない

誰かのこころに届く物語を綴っていきます。

▶︎noteはこちら
https://note.com/leyenda_rosa


 

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