お金をください
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遺書と靴を置き、ビルの屋上の縁に立った。一応、最後に、ビルの下を歩く人々に呼びかけてみた。「誰か僕にお金をください!」しかしその声は届いていないようだった。仕方ない。いよいよ飛び降りようとした時、背後で、チャリン、と音がした。振り返ると、床に百円玉が落ちている。誰が……。ふと空を見上げると、誰かの魂を天に運ぶ天使たちの姿があった。そのうちの一人の天使がこちらを見ている。どうやらあの天使がこの百円玉を投げてくれたらしい。俺は飛び降りるのをやめ、百円玉を握りしめて、ビルの近くにある自販機で缶コーヒーを買って飲んだ。温かかった。空を見上げると、天使の群れはもう見えなくなっていた。
ファンタジー
公開:25/07/26 18:47
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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