夏祭り

祭りは例年どおりの賑わいを見せている。
夕方から回りだした各町の山車だが、やはりわたしの地域のものが最も木彫りの装飾が精緻かつ派手である。
広場に集まった山車の競演を終えたころに成された列に並べば、お待ちかねの恒例行事。
正面に腰を据えた大黒さまから、小槌で頭を小突いていただく。
連日猛暑日が続いても、これを授からなければ、夏が来たと実感することはない。
幼い頃からの記憶に、しっかり刻まれているのだ。
『ことしの夏も暑くなりそうだねえ。心してのぞむのだよ』――そうおっしゃっておられるかのような相貌の大黒さまに深々と礼をし、隣に従えた小若にも頭を下げて帰宅した。
本格的な夏はすぐそこ。
持病のせいで猛暑と闘う体力はないので、冷房(クーラー)という文明の利器に頼り、涼むことにする。