屋久島にて

0
4

――こんにちは
 見慣れぬ姿、ひょろっと若木みたいな奴だ。
ーーああ良かった。縄文杉より御長寿なのは貴方だと伺い、お話をお聞きしたくて
 気づけば周りもざわついている。
「何を聞きたい。来訪者よ」
ーーお初にお目にかかります。私は遠方で山岳救……貴方達の領域に迷い込んだ人を助けることを生業としています
「お前達は自由なのだろう。勝手にさせればよいではないか」
ーーそうですね。けどまぁ思うようにもいかないのも人間というものらしく

――長い間仕事一筋でしたがよく分からなくなったのです。自分の……。貴方は何を思って生きてきたのでしょうか
 死期が近い生物特有な覚悟と、樹洞のような空虚さを同時に放っていた。
「何を、も何もない。唯、ここに在った。時折似た問いを投げる者が訪れるが、動けるということが羨ましくも思う」
 返事はない。
「だが自らを憐れんだことは一度もない。この先もここに在ろうと思う」
ファンタジー
公開:25/07/21 12:11
更新:25/07/21 14:09

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容