金魚すくい

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 ポイをそっと水面に差し込み、悠々と泳ぐ金魚の腹の下に滑らせた。まるで影のようについていく――
「今です!って、破れた」
「下手くそだな~」
「このポイが破れやすいんだよ!」
「じゃあ光線も――」
 金魚をすくって「破れてるってか?」と得意げに見せつけた。
「見てろ……逃がした!」
「今の逃がすか? 隣の奴に取られたぞ」
「やったんだよ。ガキが、今晩覚えてろ」
 歯軋りする彼に俺は鼻で笑い、ポイを再び水面に近づけた。その時――
「UFOだ!」
 突然の叫びに慌てて立ち上がる。が、彼の顔を見てすぐしゃがみ直した。
「ハハハッ!」
「笑えねえよ」
 睨む俺に、彼は「冗談だろ?」と笑い、祭りの色とりどりの着物に身を包む人々を眺め、不気味に白い歯を覗かせた。
「続きは空でやろうぜ」
「ドMかよ、お前」
「より綺麗な着物を着た人間をすくった方が勝ちだ」
 そして、山頂に停めたUFOへと走り出した。
SF
公開:25/07/23 22:54
更新:25/07/24 08:19
金魚すくい 祭り 宇宙人 UFO

江戸前餡子( あなたの心の中 )

勉強中が故、感想を頂けたら幸いです。

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