本物
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夏の午後、おっさんが床に寝っ転がっていびきをかいている。おっさんの足の方には、一台の古びた扇風機があって、風を送っている。おっさんの足を見るのに飽きた扇風機は、ふと窓の外の夏空に目をやる。雲が浮かんでいる。扇風機は風を強くし、雲を動かそうとする。しかし、扇風機の風では、窓の外の雲は動かなかった。扇風機はがっくりと肩を落とす。「俺の風なんて所詮……」雲は本物の風に流されていく。やがておっさんは、足元が冷えているのに気づいて、目を覚ます。
ファンタジー
公開:25/07/22 17:53
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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