美術教師

私は高校で美術教師をしている。
私としてはもっと生徒達に情熱を持って授業を受けて欲しいが、その思いは上手く伝わらない。
美術は素晴らしいものだと教えても、聞く耳を持ってくれない。
美術はちゃんと学ぶと私生活でも役に立つのになぁ…
授業が終わると生徒達はすぐに教室から出ていく。
私はため息を吐くと、生徒達が散らかした教室に向け、軽く筆を振る。
たったそれだけで教室が綺麗に片付いた。
「せ、先生！今の何ですか？魔法？それとも超能力？」
残っていた生徒が興奮した様子で私に詰め寄ってくる。
「今のは魔法でも超能力でもないよ。ただの美術さ。そうだな…スマホ、出してくれる？」
ワクワクした様子でスマホを取り出す生徒。私はそのスマホに向けて、さっと筆を振る。
たったそれだけで取っ散らかっていたアプリが美しく並べ替えられる。画面のひび割れや汚れがきれいさっぱり消える。
「対象を美しくする術。それが美術さ」