つぼみとシルエット

私の父は枯れ枝を彷彿とさせるシルエットをしている。
ひょろっとしていて存在感も薄く、どう見ても弱そうだ。
しかし父は合気道の達人である。実は無茶苦茶強い。
細く見える枝は木刀のように固く、相手の攻撃を受け流すやその力を利用して相手を倒す。
物静か故、次どのような攻撃が来るか読めない。その雰囲気に圧倒される。
対峙した人は皆、父は枯れ枝ではなく大樹であると話す。
そんな父に、誰もが一度は騙される。
騙されると言えば、父が縁側で昼寝をしていると、必ず猫がやってきて、父のお腹の上で寝る。
多い時は４～５匹の猫が父のお腹の上で寝ている。父を自然物と勘違いしているようだ。
「たすけてくれ～」と情けない声を上げる父。こうなってしまえば達人の威厳も形無しだ。
それに父だってまんざらではない様子。猫を起こさないよう、優しく見守る。
私の父は大樹を彷彿とさせるシルエットをしていて、今日も猫の蕾をつけている。