名画でショート068『樫の森の中の修道院』(カスパル・ダーヴィト・フリードリヒ)

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この星には、廃墟しか残っていない。
豊っだった自然や文明は、核戦争によって滅び去った。
不思議なことに、というより文明が滅びたからこそ、この惑星は宇宙旅行の観光地として有名になった。
特に一番人気なのは、崩れ果てた修道院だ。
灰色の空と、焼け焦げた樫の木。壁の一部が辛うじて当時を偲ばせる。
放射能に耐性のある宇宙人はそのまま、放射能に耐性のない宇宙人は防護服に身を包みながら、動画と静止画を記録していく。そして、かつてこの星にいたという生命体のことを笑い飛ばして去っていく。
修道院の手間にある石たちは、かつては墓石であったことを、いまは誰も知らない。そのことを伝える存在も、記録もない。
ただ、そこにあるだけ。
その他
公開:25/07/15 22:38

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