つぼみとシルエット

かつて舞台上の花と呼ばれていた私も寄る年波には勝てず、老いさらばえてしまった…
皺だらけの私を見て、「枯れ花」や「みすぼらしい」と陰口を叩く今代の花達。
醜い老婆役を押し付け、私を笑いものにした。
ふぅ…この子達はまだまだね。この程度の嫌がらせで満足しているんだから。
私は今日、内弟子を連れて監督に以前からやりたかったお芝居を提案した。
それは老婆が若返る話。主役は、もちろん内弟子だ。
この子はまだ舞台女優としては花開く前の蕾。だけど、私の演技をいつもすぐそばで見せていたから私の真似なら誰よりも上手く出来る。舞台に立てば、きっと若い頃の私のシルエットと被るだろう。
この子は私の影だ。私の全てを叩き込んだ、次代の花となるべき女優だ。
確かに私の舞台上の花としての役目は終わった。だからこそ、私は彼女という種を育んだ。
今度は私がこの子の影となろう。影からこの子をくだらない嫌がらせから守るんだ。