雨の雫

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くすんだ色の雨の雫が私に降り掛かった。体がとても重い、休む所を探していると行列の中にいた。
俯向いた人ばかりだ、列の横から番号札が渡され私は4号車と書かれていた。前方に番号のバスが停まっている。いつの間にか行列はバスの方に枝分かれして消えていた。
私が4号車に乗り座った途端、バスは出発した。満席なのに静かだ、少し走ると郊外に出た。雨は止みバスは音も無く神社の前で停まった。皆は無言のままバスを降り前の道を進み見えなくなった。
私も降り歩いて行くと青空が田植えした田に映って広がっている。綺麗だ、ここは何処だろう。神社に戻るとバスの横で運転手が村人と話をしていた。
人がこの世を去る前に最後に見たいこの場所へ、運転して来る度に心が洗われますよと。大変な事になった、連れて行かれない様に社の中に隠れよう。いつの間にか眠ってしまった、社から出ると私一人だ。
夕日に輝いた透明な雨の雫がポタンと落ちて来た。
ミステリー・推理
公開:25/07/18 11:32
更新:25/07/18 17:44

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