おめでとうの意味

「おめでとうございます」
これで５度目。すれ違う見知らぬ人からの祝福の言葉。
悪戯だと全否定できない理由がある。
今日は俺の誕生日だ。
なぜ知ってる、の疑問が成立するせいで、理不尽な事実を一旦受け入れなくてはならない。
「おめでとう」逃げるように路地に駆け込んだ。何らか自分の事が拡散されているのではとＳＮＳでエゴサーチした。特にそれらしき投稿は無い。安堵と同時にますます気味が悪い。気配を感じ振り返ると一匹の黒猫の姿。
その口が開けばみゃあではなく、おめでとうと発しそうな気がして逃げ出した。
そうだ。知っている人間を探そう。それならば理由が聞ける。誰か友人がいるはずと実家付近まで近づいたら、母の姿を見つけた。
「母さん！」
「Ｙ。そんなに慌てて何…」俺は次の言葉を待った。
「…帰るなら連絡してよ。でもおめでとう」
「それ！何でおめでとうなんだよ！？」

「…あんた誕生日じゃない。変な子だね」