つぼみとシルエット

娘の背後に花の蕾が浮いている。
手を伸ばしてみるも、私の指は蕾をすり抜ける。
「何やってるの？」
首をかしげる娘。どうやら蕾が見えていないようだ。
毎日少しずつ増えていく蕾。どの蕾も固く閉じ、花咲く気配はない。
私にしか見えない、宙に浮く蕾。
ネットで調べるも答えは出ず、悶々とした日々を過ごす。

ある日、娘が学校から帰ってくるとその背後にあった蕾が全部咲いていた。
何かあった？と聞くと、満面の笑みを浮かべる娘。
「実は…彼氏ができたの…前から気になっていた人で…」
ピンときた。そういう事ね。
あの蕾は、恋の花の蕾だったんだ。
謎が解け、私も晴れやかな気分となった。

今日、娘がその彼を家に連れてきた。
彼は右目に眼帯、左腕に包帯を巻いていた。怪我でもしているの？
「某、この身に邪龍を宿しているでござる」
彼の背後に中二病のシルエットが見えた。
今日からまた、悶々とする日々が始まりそうだ…