秋の日
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ある秋の日、電車に乗って取引先に向かっていたら、目の前の席に座っていた少年が、俺に向かって、人差し指をぐるぐる回し始めた。どうやらその少年は、俺をトンボだと思っているらしい。しかし俺は普通のサラリーマンだ。だから少年のその行動を無視しようかと思っていたが、なぜか俺は少年の指に見入ってしまった。そのうち、背中がむずむずし始めた。このままでは、少年に捕まえられてしまうかもしれない。そう思っていたら、電車が駅に着いた。俺は慌てて電車を降りた。その瞬間、体がふわりと空中に浮かび上がった。背中に爽快感がある。頭をねじって見てみると、スーツの背中が破けて透明の翅が生えていた。それで俺は飛んでいた。俺はそのまま、取引のことも忘れて、秋の空へ消えていった。
SF
公開:25/07/12 17:57
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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