雨やどり

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 玉手箱から延々と立ち上る白煙。「もう勘弁してくれ」と、浦島太郎はうなだれた。老人になってしまった衝撃に浸らせてほしい。しかし、煙が止まってくれないことには、なんだか集中できない。はあ。
 私のため息を取り込んで、白煙は青空を目指していく。

***

 突然、降り出した雨。僕は公園の屋根付きベンチで途方に暮れていた。今日は、快晴の予報だったはずだ。
 ニュースでは「前触れもなく入道雲が発生しました」とアナウンサーが繰り返している。
 ベンチの屋根を大粒の雨が叩く。その音に紛れるように、誰かが駆け込んできた。
 僕と同じ高校の制服。息を弾ませた女子が、濡れた髪を払いながら言った。
「本当に、どうなってんの? あれ、同じクラスの……」

 突然の雨。公園のベンチ。ばったり出くわした、同級生。
 そんな状況に水を差すように、和装スタイルの老人が現れた。
「あの、煙をとめる方法を知りませんか?」
青春
公開:25/07/14 19:36

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