微マインダー

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人工的な光、音、人の声――そのすべてが、疲労感の源になっていると感じる。
なのにスマートフォンは手放せないのだ。
矛盾している。
日常のわずらわしさから離れたいと思い、小さな旅にでた。
いつもと反対方向へ向かう電車に乗り、喧騒から離れてゆく景色を車窓越しに眺める。
通知音が鳴ったのは、うとうとし始めていたとき。
スマートフォンを確かめると、微マインダーアプリのお知らせが届いていた。

――付き合って1年目記念日。(2人で貯めたお金でイタリアン)

微マインダーのいいところは、好みの香りを設定しておけることだ。
だからわたしのスマートフォンは、別れた彼が好きだった香水によく似た香りをかすかに漂わせている。
泣いてすがっても、彼は別の人のところへ行ってしまった。
眠ることさえできなくなっていたけど、いまはもう乗り越えられたから大丈夫――そう言い聞かせながら、固くまぶたを閉じた。
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公開:25/07/14 10:29

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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