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あぶくが背を伝って脇腹から逃れ、海面を目指してのぼっていく。反対に僕は海底へと沈む。あたりは青というより濃紺で、海面もきらきらと光っているわけじゃない。泡が登るからそちらが海面だとわかるだけで、もう、光は届いていない。静かな暗い世界でゆらゆらと水に流されると心が凪いでくる。えら呼吸になった体で想像するから苦しくはなく、うなされることもなく穏やかに眠りにはいれる。クーラーで冷えたシーツは夜の冷たい海水のようで心地いい。

 眠れない夜、僕はこうして海に沈むのを想像する。深く深く、海の底へ。思考のない感覚だけの世界へ。今日も潜水する。
その他
公開:25/07/10 23:48

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