わたしの夢はそのときに

ふと動物園に行きたいと思った
トラを見たいと思った

動物園といえばトラだ

となりの席の子は
ライオンじゃないの？
と言った

うしろの席の子は
ゾウだよねえ
と言った

ちいさいとき
動物園でみたキツネは
うろうろ
ぐるぐる
歩いてばかりで
怖い顔をしていた
何かを狙ってる顔だった
昔話のキツネとはちがってみえた
何かに化けることがなく
だからほんとは
キツネじゃないんだろうなあと思ったりした
タヌキは
一緒にいなかった

猿山のサルを見ていると
自分をみているようで
すこし嫌になったりした
それでも
目が離せなかった
動物園といえばトラだけれど
一番に時間をつかってみていたのは
じつはサルだった

ずっとずっと奥のほうに
隠れるようにして大きなバクがいて
わたしの夢はそのときにたべられてしまった

動物園といえばトラなんだけど
じつはあんまり
トラについての記憶はない






.